宝物
県指定文化財獅子型墨壺1個
鶴岡八幡宮に伝来する鎌倉彫の宝物には、菊唐草文大香合・牡丹文椀・流水紅葉文椀などがあるが、中でも鎌倉彫の遺品としては珍しい墨壺があり、神奈川県の文化財(民俗資料)に指定されている。

鎌倉彫の起源は、はっきりしていないが、三代将軍源実朝公に宋に渡ることをすすめたことで知られる中国人陳和卿(ちんなけい)と仏師運慶の孫、康円とが法華堂の仏具に共に彫ったのが鎌倉彫であるとの伝説がある。

当時、鎌倉は中国宋文化の輸入が盛んであったことから考えれば、おそらくは中国渡来の堆朱・堆黒と呼ばれる彫漆の工芸品に触発されて、彫漆の堅さから日本人の好みにあう柔らかみのある木彫・漆塗りへと変化し、さらに仏師の手によって仏具などにも発展したのが鎌倉彫なのであろう。

鎌倉彫という名称の文献上の初見は近世であるが、室町時代の公卿三条西実隆の日記に、「堆紅盆鎌倉物一枚」「盆 香合鎌倉物」「居盆鎌倉物」と記されている「鎌倉物」が鎌倉彫のことと考えられている。朝廷や宮御方への奉納品のリストにみえるもので、室町期にはすでに工芸品として高く評価されていたと思われる。

墨壺は大工が直線をひく道具である。この作品はうずくまった獅子を一木で彫り出し、頭部及び胴部の両側に牡丹の花と麻の葉模様をあしらい、獅子には刳りぬかれた糸車が内蔵され、頭頂部にハート型の墨を入れる穴(墨池)がもうけられている。墨糸は中心線上に貫通して、獅子の口の陶製の糸出し孔から出るように工夫されている、獅子の目は玉眼で、金属製の円頭釘で玉をとめ、釘頭が瞳の役目をしている。全体に黒漆を塗ったのち、頭部・胴部・牡丹に朱漆をかけ、葉や枝の部分には緑や黄の漆も塗られたとみられる華麗な鎌倉彫の作品である。

鶴岡八幡宮造営の時、建築工匠が製作使用し後に奉納されたものと考えてよかろう。
獅子型墨壺イメージ

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