宝物
国宝太刀 銘 正恒1口
太刀 銘 正恒イメージ
鶴岡八幡宮に伝わる刀剣は凡そ60口を数えるが、その内の幾つかは国宝・重要文化財の指定を受けている。沃懸地杏葉螺鈿太刀(国宝)は衛符の太刀とも呼ばれ、鎌倉初期の武人が佩用する太刀の様式を今日に伝えており、また明治天皇御奉納の金象嵌銘国吉太刀(重文)や北条氏綱奉納の太刀3口(重文)は、それぞれ鎌倉・室町時代の太刀の様式を残す貴重な物である。

衛符の太刀と並び国宝指定を受けているのが、この銘正恒の太刀である。備前正恒も著名だが、これは備中青江鍛冶系の正恒による鎌倉時代の作であり、腰反り高く踏張りあり小切先となる優美にして品格のある姿である。備中古青江正恒の最高傑作であり、また古青江の中でも最高との評価が高い。保存状態も極めて良好である。備中古青江はこの太刀の素晴らしさにより、その名を高く残しているとも言われる。

この太刀は享保の改革を遂行した幕府中興の英主、徳川八代将軍吉宗が、元文元年(1736)の当宮修理造営に際し奉納した物である。造営の記録には同年9月15日に正遷宮が行われ17日に将軍代拝として戸田越前守忠余が参向して奉幣、真の太刀1腰を奉献したことが記されている。

徳川将軍奉納の太刀は、この正恒太刀の他、九代家重奉納の長光太刀(重文)、十代家治奉納の國村太刀、十一代家斉が現在の本殿を造営した際に奉納した「肥前住播磨大椽藤原忠國」銘の太刀が伝来している。これらは、いずれも総金具赤銅魚子地金菊花紋高彫紋散、鞘は金梨子地菊花蒔絵という立派な糸巻拵が付属しており、いかにも将軍家奉納の太刀に相応しいといえよう。

徳川将軍奉納の太刀はいずれも当宮社殿修造に際して奉納されたものである。家康の修営以来、幕府により幾度か修造が繰り返されてきたことから、武家の守護神たる八幡宮への徳川歴代将軍の崇敬の篤さを窺い知ることができる。さらには、源頼朝公が武家の魂の拠り所として鶴岡八幡宮を祀り崇敬の誠を捧げたその精神を、徳川将軍家も受け継いでいったことが、正恒以下の太刀から読み取ることができよう。

もどる
上へ 次へ
Copyright(c)2002,TheTsurugaoka hachimangu Shrine.All rights reserved.