自然
樹木物語
イシゲヤキとツキゲヤキ欅
梛イメージ ケヤキは日本の代表的な広葉樹です。関東地方では、雑木林、農家の防風林、公園、街路樹と、どこにでもあるありふれた樹木です。長寿で高木になることからよく目につき、日本的な風景を形づくってくれています。もちろん、鶴岡八幡宮の境内にもそこそこに散在し、よく実生します。なかでも境内の東南、牡丹庭園内にあるケヤキは幹回りが3mを超え、土を盛り上げた土居の上にそびえ、源氏池を見下ろしています。太い幹と高い梢を持つケヤキの特徴を良く表している美しい姿です。

このケヤキは樹形の整っていることを理由のひとつとして鎌倉市により昭和48年、天然記念物に指定されました。この土居は境内の三方を囲んでいて、指定のケヤキの他にも数株の大木があります。かつて景観を保つために周囲に植栽されたことが、推測されます。

ケヤキは樹形が美しいだけでなく、材としても第一級の有用材です。用途が広く食器・家具・漆器木地など身近で使用する木製品として親しまれています。木目が美しく、狂いがほとんどなく、水湿によく耐え保存性が高いケヤキ材の特色は、社寺建築の用材として最も勝れていて、神社の御社殿にもよく使用されています。特に関東地方の神社の古い御社殿は、多くがケヤキで建造されており、重厚な質感のある細工のこまかい特徴のある建物を作り出しています。

鶴岡八幡宮の御社殿は、ほとんどが朱漆で塗ってあり、いちべつしては、判らないのですが力のかかる柱は、ほとんどケヤキ材が使用されています。内陣より奥は素木造りで、御扉など内装材はヒノキが使用されていますが柱は全てケヤキ材です。まだ木目も美しく木肌も艶やかで、建造後170年余の歳月を感じさせない確固として堅牢な木組を今も見せております。

このように生活に深く関わってきたケヤキですが不思議なことに古典にはその名が見えません。ケヤキの名が文献にらわれるのは室町時代からのようです。それ以前はツキと呼ばれ「槻」の字があてられ、万葉集に柿本人麿の詠んだ次の歌があります。
(前略) 堤に立てる槻の木のこちごちの枝の春の葉の茂きがごとく (後略)
この槻の木がケヤキであるといわれています。ただツキとケヤキがまったく同一であるか否かについては、古来より論議があります。貝原益軒はその著書に「槻」と「欅」を並べて掲げ、「槻」の頃に「葉も木理もケヤキに似たり葉を見ては別ちがたしその木理を見て別つ」と説明しています。九州地方の山村では、現在でもケヤキを材質によって二種に呼び分けています。大分県のある地区では、それぞれイシゲヤキとツキゲヤキと区別しています。ツキゲヤキは、赤い良材ですが、イシゲヤキは材が白くて堅くて乾燥すると狂いが出て割れが入りやすく、外部からは区別がつきません。

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