自然
樹木物語
柳絮繽粉(りょうじょひんぷん)として白枝垂
シロシダレイメージ 柳絮繽粉として御溝の水には柳絮が繽粉として雪のように舞う頃になると、時は穀雨の節に入って春は漸く老い、照る日の影も思いなしか少しずつ輝きを増して空も紺青に澄んでくる。産・覇二橋の袂に柳の糸を撫でて薫風が爽やかに吹き渡ると、牡丹の花が満都の春を占断して王者の如くに咲き誇り、城中の士女は家を空しくして只管に花の跡を追うて日を暮らす。

上記は東洋史家である石田幹之助博士の盛唐の都、長安の都人士の晩春を髣髴とさせる「長安の春」の一節です。

源平池の水ぬるみ、牡丹庭園の牡丹も初夏かとも思える晩春の日差しに一気に花を満開にさせる頃、境内一円に、どこからともなく綿毛が飛び始めます。風の吹き溜まりには綿毛がゴムまり程に纏ったものをみることができます。これは、シダレヤナギ類似の一種であるシロシダレの種子で柳絮と呼ばれています。シロシダレは枝がさほど長く垂れないこと、若葉が多毛で白く見えることからシダレヤナギと区別されます。

この柳は、源平池の畔に6株、柳原の池に2株あり、すべて雌株で、昭和52年市指定の天然記念物とされました。うち源平池の1株は、残念ながら昭和58年の台風により地上2mを残して折れてしまいました。これらの木は明治13年の調査記録で、すでに大樹であるとされています。古絵図にも柳原の名がみられ、境内に古くより植えられていたことは察せられますが、それ以上のことはわかりません。

早春のヤナギの芽吹きの美しさは、日本情緒豊かな情景ですが、このシダレヤナギの系統は中国伝来といわれています。咲き群れる牡丹の香に咽び、水面に映る古都鎌倉の青空に繽粉として舞う柳絮を撫で、盛唐の長安人士を気取ってみてはいかがでしょうか。

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